悪気のないウソってありますよね。まさか人に迷惑をかけるとは思えないような。
でもウソが一人歩きを始めると、ひたすらそれを信じて振り回され、膨大な時間と労力をムダにしてしまう、なんて人も世の中にはいるんです。
トラックバック野郎のお題「ウソにまつわる事件簿」に応えて、今回は長々と思い出話を書かせていただきます。
もう8年も前の話です。
会社でパソコン雑誌を読んでいた僕は、「ウィンドウズマン」という小説の書評を見つけ、大変興味を持ちました。内容がおかしいのです。
「そんな面白い小説、あるはずない」と思うくらいです。
冷静になって見ると、雑誌の中でそのページだけが胡散臭く感じました。
「ジョーク記事だ」という考えに至ると同時に、「でももし本当だったら…」という、焦りのような感覚に襲われました。
その日僕は本屋を3軒回りました。
どこにも「ウィンドウズマン」はありませんでした。
記事がウソだったか、または入手困難な希少本かのどちらかです。
焦りは本物になりました。
「まずは情報元に確認しよう。」
PC雑誌の編集部に電話をかけました。電話口の男はこう言いました。
「今担当はいませんが、でっちあげで記事を書くことはありません。」
やはり存在するのです。存在する以上、手に入れなくてはなりません。
本屋がダメなら出版社です。僕はNTTの番号案内にかけました。
東京、千葉、埼玉、神奈川で調べてもらって、結局そんな出版社はありませんでした。正確には電話番号の登録が無かったということです。
そこへ上司がやってきました。
驚いたことに上司は「ウィンドウズマン」を知っていました。
「アレ、もう絶版か発禁なんじゃない?」
そのセリフを聞いた瞬間から、僕の心臓はドキドキし始めました。
(あった、ウィンドウズマン、あった!)
もうどんな希少本だろうと、一生かけてでも手に入れる勢いです。
次の日。
前日とは別の本屋を3軒回り、ニフティの「本の探偵団」に依頼をアップし、社内メールで全社員に協力を求めました。
手は尽くしました。
風邪で寝込んでいる彼女にまで、「見つけたらダブってもいいから即買いしといて」等と無茶なことを頼んだり、今思えば熱に浮かされていたのは僕の方でした。
普通には売ってない。出版社も素性を隠している。知る人ぞ知る希少本。しかも書評によると内容は間違いなく面白い…。
妄想は日を追うごとに膨らんで行きました。
その間もPC雑誌の編集部には連絡を取り続けていたのですが、担当はいつも不在です。
「諦めるものか。」
世界中にたった一人でも、「ウィンドウズマン」を読んでいる人がいるかと思うと、いても立ってもいられませんでした。
とうとう夢に出ました。
他の雑誌にも「ウィンドウズマン」が紹介されている、という夢でした。
夢を見た日の昼に、書評の担当本人から電話がかかってきました。
そして僕は引導を渡されることになる訳ですが…。
それにしても最初に電話口に出た男と、会社の上司!
軽い気持ちでテキトーな事を言っちゃいけませんよ。
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